10.付録


◇楽典などにはあまり出てこない用語辞典

「アゴーギク」(Agogik:独)
 速度法。緩急法。テンポの揺れ。歪みではない。詳しくは自分で調べること。

「アーティキュレーション」(Articulation:英)
 発音に関すること。フレージング。詳しくは自分で調べること。

「デュナーミク」(Dynamik:独)
 音の強弱に関すること。ダイナミックス。詳しくは自分で調べること。

「アインザッツ」(Einsatz:独)
 発音の同時性。縦を合わせること。詳しくは自分で調べること。

「アッコード」(Akkord:独)
 和音。コード。詳しくは自分で調べること。

「アウフタクト」(Auftakt:独)
 上拍。弱拍。弱起。詳しくは自分で調べること。

「パウゼ」(Pause:独)
 日本語ではなぜか休止という。間。無音。詳しくは自分で調べること。

「ブーフシュターベ」(Buchstabe:独)
 文字。練習用のアルファベット。原則としてドイツ語読み。Aは「アー」と読み、Eは「エー」と読む。聞き違いを避けるために、その語から始まる単語を同時に用いることも多い。例えば「ブラームス(Brahms)、ベー(B)から」などという。また時に「J」が欠けることがある。これは、瞬間的に楽譜を見たときに「J」と「I」を見間違えやすいこと、フランス語と英語では「J」と「G」の発音が逆になることなどの理由による。

「ヌンメル」(Nummer:独)
 番号。ナンバー。「Nr」と略記。

「プルト」(Pult:独)
 本来は譜面台のこと。転じて弦楽器群で、1台の譜面台を共用する隣合った2席の、まとめた呼称。

「マチネ」(Matinee:仏)
 昼間興行のこと。

「ソワレ」(Soiree:仏)
 夜間興行のこと。

「反響板(音響反射板)」
 舞台上で演奏された音を、ほどよくブレンドした上で、客席に向かって響かせてくれるはずの、舞台両サイド、後方、上方の、化粧板。時として、形だけの役立たずであったり、金屏風(きんびょうぶ)に変身していたりするので、注意が必要。

「ひなだん(雛壇)」
 舞台中央後方の、段状に高くなったところ。主に管楽器が配置される。ふつう平台などで構成設置するが、時に、半完成品としての「山台(やまだい)」を使うことがある。

「平台(ひらだい)」
 舞台上で、ひなだん(雛壇)など、ある高さで一定の面を作るときに使う、板状のユニット。厚さはふつう4寸(12cm)。

「四六(しぶろく)」
 平台などの大きさを示す、長さの単位。4尺×6尺(120cm×180cm)のこと。劇場スタッフ用語には、江戸時代からの、芝居小屋の裏方言葉が数多く残っているが、この長さの単位もそのひとつ。寸、尺のほか、間(けん)もよく使われる。1間=180cm である。「間口(まぐち)10間」とは、舞台の間口が18m のこと。ひなだんは、1段目は平(ひら=4寸)、2段目は尺(しゃく=1尺)、3段目は2尺に、または、1段目は尺、2段目は2尺、3段目は3尺にする事が多い。

「上手・下手」
 舞台の左右方向の呼称。客席から舞台に向かって右を「上手(かみて)」、左を「下手(しもて)」という。「舞台下手」を「舞台へた」と読んではいけない。

「袖(そで)」
 舞台両サイドの、客席からは見えないスペース。出演者がステージに上がる準備をするところ。

「花道」
 舞台以外で出演者が演じることのできる、細長いスペース。歌舞伎などでは、下手寄りの客席の中に設置される。また、舞台から連続して壁面沿いに設置されているものを、袖花(そではな=袖花道の略)という。

「せり」
 舞台上の一部に設置されている、昇降装置。地下倉庫から備品を運ぶときにも使われる。

「奈落」
 舞台真下の空間、または、そのいちばん下のフロア。

「客電」
 客席照明のこと。

「シーリングライト」(Ceiling light)
 客席天井部分に、横一列に並んで設置されている、主照明。

「フロントサイドライト」(Front side light)
 舞台上から見て、両サイドの前方壁面付近に設置されている、縦数列に並んだ照明。オーケストラの演奏会では、指揮者に後光が射し「指揮者がみにくい」ので、一般には使用されない。

「アウト」(Out)
 照明用語としては、消灯すること。「客電アウト」などと使う。

「FI・FO」
 フェード・イン (Fade-in)、フェード・アウト(Fade-out)のこと。照明用語としては、徐々に「あかり(照明のこと)」をつけること、または、徐々に消すことをいう。

「PA」
 場内拡声装置。Public Addressの略。

「MC」
 司会者。Master of Ceremoniesの略。

「1ベル・本ベル」
 開演予告ベルやチャイムを「1ベル」「予ベル」などと、また、開演ベルやチャイムを「2ベル」「本ベル」などという。

「ゲネ・プロ」
 総練習。ゲネラルプローベ(Generalprobe)の略。主に、最後の(本番寸前の)本番会場での総練習を指す。GPと略すことが多い。

「乗り番・降り番」
 曲による出演の有無について、出演する場合を「乗り番」、出演しない場合を「降り番」という。

「黒黒・白黒」
 本番の服装が何であるかを、上(トップ)下(ボトム)の服の色を指していうときの、表現方法。服装の表現には、黒服(黒の礼服)、白タキ(白のタキシード)、銀タイ(銀または白のネクタイ)、黒蝶(黒の蝶ネクタイ)などがある。

「ステ・マネ」
 ステージ・マネージャー (Stage Manager)の略。公演当日の進行責任者および演出担当者。

「キュー」(Cue)
 きっかけ。合図。Qではない。

「ダメ出し」
 ダメなところを洗い出すこと。リハーサルの後などで、関係者が不都合なところをチェックすることをいう。「コン・マスにダメ出し喰っちゃった」などと使う。動詞化して「ダメを出す」とも。

「いたつき(板つき)」
 あらかじめステージ上の所定の位置についていること。

「もぎり」
 公演の受付で、チケットの半券を切り取ること。語源は「もぎり取る」にあると推定される。公演の受付で、チケットの半券を切り取る女性のことを「もぎり嬢」という。

「音だし」
 @楽器の演奏に際してのウォーミング・アップのこと。
 A各奏者の全ての準備が整って、演奏を開始するさま。

「あがり」
 終了のこと。例えば「今日の練習、何時あがり?」などと使う。

「楽屋入り」
 公演当日、演奏者が楽屋に入ること。演奏者は精神面について、公演に向けかなり作ってきているので、適度な緊張をもって望まねばならない。

「バミる」(動・ラ五段)
 舞台上で特定の位置をマークすること。推定語源は「場見る」である。「バビる」とも。また連用形の名詞化が起こり、そこから「バミリ・テープ」(バミる時に使う、布製のガムテープなど)などの言葉が生まれた。

「ハケる」(動・ラ下一)
 舞台上から姿を消すさま。語源は「捌ける」である。時に「ハカす(捌かす/動・サ五段)」とも。「公演終了後、ヴァイオリンは下手に、ヴィオラ・チェロは上手にハケる」などと使う。

「おす」(動・サ五段)
 時間がオーバーしているさま。推定語源は「押す」である。「ゲネ・プロのスタート、5分おし」などと使う。

「まく」(動・カ五段)
 所要時間を切り詰めるときに使う。この語源は「巻く」であるが、これは、ギョーカイなどで予定より時間がおしたときに、ADなどが出演者に向かって人差し指をぐるぐる巻いたことに、由来する。「ちょっと時間がないので、終わりの方、少しまいて」などと使う。また名詞化して「まき」ともいう。「ステ・マネから、まきが入っちゃってね」などと使う。

「生きる・死ぬ」
 機能しているさまと、機能していないさま。ほかに「殺す(機能させていないさま)」も。用例は「そこのコンセント、生き(通電し)ている?」など。

「ケータリング」(Catering)
 湯茶等の接待をいう。特にゲストに対しては、休憩などの都度、飲物を上げ下げするだけではなく、同時に、セルフ・サービスのセットも準備しておくとよい。またエキストラに対しては、廊下や部屋などにセルフ・サービス・コーナーを設けるだけでもよい。

「小屋」
 演奏会場のこと。

「キャパ」
 キャパシティ(Capacity)のこと。演奏会場の収容人員数。

「午前・午後・夜間」
 施設の利用時間区分の名称。多くの場合、午前とは 9:00〜12:00を、午後とは13:00〜17:00を、夜間とは18:00〜22:00をいう。

「完全退館」
 施設の館内または敷地内から、完全に利用者が退出すること。公共の施設ほど完全退館にはうるさい。性格の悪い担当者のいる施設では、ギリギリまで利用した挙げ句、風のように搬出して制限時間数秒前に完全退館するのが望ましい。

「パブリシティ」(Pablicity)
 主にマスコミ向けの、話題提供の形を取る、結果的にはPRの手段をいう。ただしPRとの決定的な違いは、PRが新聞TVにおいて広告やコマーシャルとなり、莫大な利用料金がかかるのに比べ、パブリシティは記事やニュース・ネタになり、一切料金がかからないことにある。そのかわり、PRはこちらの思い通りのものになるのに比べ、パブリシティだと取材者の思惑がからむため、こちらの思い通りにいくとは限らないことである。

「アポ」
 アポイントメント(Appointment =約束)の略。「社長にアポ取ってある」などと使う。

「リコンファーム」(Reconfirm)
 再確認の意。ホテル等の予約の再確認のほか、ゲストなどに対する、業務内容、交通手段、宿泊、送迎、条件、担当者などの再確認をも指す。

「アゴ・アシ」
 食費と旅費のこと。「ギャラ、E万(イーまん、または、エーまん)、アゴ・アシ別」(3万円の出演料で、食費と旅費は別途支払われる、の意)などと使う。

「おはようございます」
 時間の観念のないひと(例えば音楽家)の、その日最初に逢ったときの挨拶語。アマチュアがプロに対してなど、目上のひとに対しては使わない方がよい。例えばリハーサルのはじめなどに、プロの先生が「おはよう」といったときには「おねがいします」と答えよう。

「おつかれさまでした」
 時間の観念のないひと(例えば音楽家)の、その日の別れの挨拶語。アマチュアがプロに対してなど、目上のひとに対しては使わない方がよい。例えばリハーサルのおわりに、プロの先生が「おつかれさん」といったときには「ありがとうございました」と答えよう。

「楽隊語」
 これには倒置語と特殊語とがある。
 倒置語は、語順を入れ換える方法。例えば「きたない」は「ナイキタ」になり「きれい」は「レイキ」になる。また形容詞は、「だ」や「な」の語尾がつき、形容動詞化や副詞化して活用する。例としては「楽屋はナイキタだ」とか「レイキな楽屋」などが挙げられる。動詞の活用は「する」の語尾をつけてサ変動詞化する。また、2字語(2音価)は長音化することにより3音価の倒置語となる。例えば「部屋」という言葉が「ヤーヘ」など。そして1字語(1音価)に至っては、その母音を独立させた上で更に長音化させ、3音価の倒置語に仕立てるという荒業をしている。例えば「タバコの火を貸して」は「バコタのイーヒ貸して」となるのである。
 特殊語には、2種類ある。ひとつは性別の特殊語で、男性を「ドゥア(独語で長調= Dur)」で表し、女性を「モール(独語で短調=moll)」で表し、更にそれぞれ倒置する。したがって、男性は「アードゥ」女性は「ルーモ」となる。もうひとつは数で、それぞれ次のようになる。
  1=C(ツェー)
  2=D(デー)
  3=E(エー)
  4=F(エフ)
  5=G(ゲー)
  6=A(アー)
  7=H(ハー)
  8=オクターヴ
 用例をいくつか挙げる。
 「エーマのアードゥはブーデだなあ」(前の男はデブだなあ)
 「ナリトのルーモはスーブだなあ」(隣の女性はブスだなあ)
 なおこの種の言葉は紛れもなくアウト・ロー言葉なので、アマチュアは理解できるにとどめ、みずから使用するのは慎んだ方がよい。
 [歴史]
 一説に楽隊語は、トーサイ(斎藤=斎藤秀雄)たちが使いはじめたのが起源とされている。これを俗に「楽隊語トーサイ起源説」という。それが戦後、ズージャ(ジャズ)のアーティストに広まったときには、ドイツ語を原典とする表現は影をひそめ、全て日本語と英語に原典を求める言葉となっていた。例えば女性のことを「ルーモ」と表現せず「ナオン」というのは、ズージャの連中によっているのである。例えば彼らは \63,000.-のことを「アー万エー千」とはいわずに「エー万イー千」というので、注意が必要である。
 その後ズージャ言葉はポップス界へと広まり、折から試験放送、本放送にこぎ着けていたTV界にも、多大な影響を及ぼすのである。ただ、TV界の現在を特徴づけるギョーカイ用語は、ズージャ言葉と、劇場スタッフ(舞台監督、照明、大道具、小道具などの業界)のスラングとの、混血語であることは紛れもない。

「ギョーカイ(業界)用語」
 主としてTV界で使われている言葉。例えば「ワラう」(=排除する)や「ケツ・カッチン」(=同日に別の予定が入っていてあがりの時刻が決まっており、時間がおせない)などがあるが、全くもって、知る必要がない。
§付録§

◇楽典などにはあまり出てこない用語辞典
 この辞典に出逢ったのをきっかけに、各自で自分なりに調べてみてください。

「アゴーギク」(Agogik:独)
 速度法。緩急法。テンポの揺れ。歪みではない。詳しくは自分で調べること。

「アーティキュレーション」(Articulation:英)
 発音に関すること。フレージング。詳しくは自分で調べること。

「デュナーミク」(Dynamik:独)
 音の強弱に関すること。ダイナミックス。詳しくは自分で調べること。

「アインザッツ」(Einsatz:独)
 発音の同時性。縦を合わせること。詳しくは自分で調べること。

「アッコード」(Akkord:独)
 和音。コード。詳しくは自分で調べること。

「アウフタクト」(Auftakt:独)
 上拍。弱拍。弱起。詳しくは自分で調べること。

「パウゼ」(Pause:独)
 日本語ではなぜか休止という。間。無音。詳しくは自分で調べること。

「ブーフシュターベ」(Buchstabe:独)
 文字。練習用のアルファベット。原則としてドイツ語読み。Aは「アー」と読み、Eは「エー」と読む。聞き違いを避けるために、その語から始まる単語を同時に用いることも多い。例えば「ブラームス(Brahms)、ベー(B)から」などという。また時に「J」が欠けることがある。これは、瞬間的に楽譜を見たときに「J」と「I」を見間違えやすいこと、フランス語と英語では「J」と「G」の発音が逆になることなどの理由による。

「ヌンメル」(Nummer:独)
 番号。ナンバー。「Nr」と略記。

「プルト」(Pult:独)
 本来は譜面台のこと。転じて弦楽器群で、1台の譜面台を共用する隣合った2席の、まとめた呼称。

「マチネ」(Matinee:仏)
 昼間興行のこと。

「ソワレ」(Soiree:仏)
 夜間興行のこと。

「反響板(音響反射板)」
 舞台上で演奏された音を、ほどよくブレンドした上で、客席に向かって響かせてくれるはずの、舞台両サイド、後方、上方の、化粧板。時として、形だけの役立たずであったり、金屏風(きんびょうぶ)に変身していたりするので、注意が必要。

「ひなだん(雛壇)」
 舞台中央後方の、段状に高くなったところ。主に管楽器が配置される。ふつう平台などで構成設置するが、時に、半完成品としての「山台(やまだい)」を使うことがある。

「平台(ひらだい)」
 舞台上で、ひなだん(雛壇)など、ある高さで一定の面を作るときに使う、板状のユニット。厚さはふつう4寸(12cm)。

「四六(しぶろく)」
 平台などの大きさを示す、長さの単位。4尺×6尺(120cm×180cm)のこと。劇場スタッフ用語には、江戸時代からの、芝居小屋の裏方言葉が数多く残っているが、この長さの単位もそのひとつ。寸、尺のほか、間(けん)もよく使われる。1間=180cm である。「間口(まぐち)10間」とは、舞台の間口が18m のこと。ひなだんは、1段目は平(ひら=4寸)、2段目は尺(しゃく=1尺)、3段目は2尺に、または、1段目は尺、2段目は2尺、3段目は3尺にする事が多い。

「上手・下手」
 舞台の左右方向の呼称。客席から舞台に向かって右を「上手(かみて)」、左を「下手(しもて)」という。「舞台下手」を「舞台へた」と読んではいけない。

「袖(そで)」
 舞台両サイドの、客席からは見えないスペース。出演者がステージに上がる準備をするところ。

「花道」
 舞台以外で出演者が演じることのできる、細長いスペース。歌舞伎などでは、下手寄りの客席の中に設置される。また、舞台から連続して壁面沿いに設置されているものを、袖花(そではな=袖花道の略)という。

「せり」
 舞台上の一部に設置されている、昇降装置。地下倉庫から備品を運ぶときにも使われる。

「奈落」
 舞台真下の空間、または、そのいちばん下のフロア。

「客電」
 客席照明のこと。

「シーリングライト」(Ceiling light)
 客席天井部分に、横一列に並んで設置されている、主照明。

「フロントサイドライト」(Front side light)
 舞台上から見て、両サイドの前方壁面付近に設置されている、縦数列に並んだ照明。オーケストラの演奏会では、指揮者に後光が射し「指揮者がみにくい」ので、一般には使用されない。

「アウト」(Out)
 照明用語としては、消灯すること。「客電アウト」などと使う。

「FI・FO」
 フェード・イン (Fade-in)、フェード・アウト(Fade-out)のこと。照明用語としては、徐々に「あかり(照明のこと)」をつけること、または、徐々に消すことをいう。

「PA」
 場内拡声装置。Public Addressの略。

「MC」
 司会者。Master of Ceremoniesの略。

「1ベル・本ベル」
 開演予告ベルやチャイムを「1ベル」「予ベル」などと、また、開演ベルやチャイムを「2ベル」「本ベル」などという。

「ゲネ・プロ」
 総練習。ゲネラルプローベ(Generalprobe)の略。主に、最後の(本番寸前の)本番会場での総練習を指す。GPと略すことが多い。

「乗り番・降り番」
 曲による出演の有無について、出演する場合を「乗り番」、出演しない場合を「降り番」という。

「黒黒・白黒」
 本番の服装が何であるかを、上(トップ)下(ボトム)の服の色を指していうときの、表現方法。服装の表現には、黒服(黒の礼服)、白タキ(白のタキシード)、銀タイ(銀または白のネクタイ)、黒蝶(黒の蝶ネクタイ)などがある。

「ステ・マネ」
 ステージ・マネージャー (Stage Manager)の略。公演当日の進行責任者および演出担当者。

「キュー」(Cue)
 きっかけ。合図。Qではない。

「ダメ出し」
 ダメなところを洗い出すこと。リハーサルの後などで、関係者が不都合なところをチェックすることをいう。「コン・マスにダメ出し喰っちゃった」などと使う。動詞化して「ダメを出す」とも。

「いたつき(板つき)」
 あらかじめステージ上の所定の位置についていること。

「もぎり」
 公演の受付で、チケットの半券を切り取ること。語源は「もぎり取る」にあると推定される。公演の受付で、チケットの半券を切り取る女性のことを「もぎり嬢」という。

「音だし」
 @楽器の演奏に際してのウォーミング・アップのこと。
 A各奏者の全ての準備が整って、演奏を開始するさま。

「あがり」
 終了のこと。例えば「今日の練習、何時あがり?」などと使う。

「楽屋入り」
 公演当日、演奏者が楽屋に入ること。演奏者は精神面について、公演に向けかなり作ってきているので、適度な緊張をもって望まねばならない。

「バミる」(動・ラ五段)
 舞台上で特定の位置をマークすること。推定語源は「場見る」である。「バビる」とも。また連用形の名詞化が起こり、そこから「バミリ・テープ」(バミる時に使う、布製のガムテープなど)などの言葉が生まれた。

「ハケる」(動・ラ下一)
 舞台上から姿を消すさま。語源は「捌ける」である。時に「ハカす(捌かす/動・サ五段)」とも。「公演終了後、ヴァイオリンは下手に、ヴィオラ・チェロは上手にハケる」などと使う。

「おす」(動・サ五段)
 時間がオーバーしているさま。推定語源は「押す」である。「ゲネ・プロのスタート、5分おし」などと使う。

「まく」(動・カ五段)
 所要時間を切り詰めるときに使う。この語源は「巻く」であるが、これは、ギョーカイなどで予定より時間がおしたときに、ADなどが出演者に向かって人差し指をぐるぐる巻いたことに、由来する。「ちょっと時間がないので、終わりの方、少しまいて」などと使う。また名詞化して「まき」ともいう。「ステ・マネから、まきが入っちゃってね」などと使う。

「生きる・死ぬ」
 機能しているさまと、機能していないさま。ほかに「殺す(機能させていないさま)」も。用例は「そこのコンセント、生き(通電し)ている?」など。

「ケータリング」(Catering)
 湯茶等の接待をいう。特にゲストに対しては、休憩などの都度、飲物を上げ下げするだけではなく、同時に、セルフ・サービスのセットも準備しておくとよい。またエキストラに対しては、廊下や部屋などにセルフ・サービス・コーナーを設けるだけでもよい。

「小屋」
 演奏会場のこと。

「キャパ」
 キャパシティ(Capacity)のこと。演奏会場の収容人員数。

「午前・午後・夜間」
 施設の利用時間区分の名称。多くの場合、午前とは 9:00〜12:00を、午後とは13:00〜17:00を、夜間とは18:00〜22:00をいう。

「完全退館」
 施設の館内または敷地内から、完全に利用者が退出すること。公共の施設ほど完全退館にはうるさい。性格の悪い担当者のいる施設では、ギリギリまで利用した挙げ句、風のように搬出して制限時間数秒前に完全退館するのが望ましい。

「パブリシティ」(Pablicity)
 主にマスコミ向けの、話題提供の形を取る、結果的にはPRの手段をいう。ただしPRとの決定的な違いは、PRが新聞TVにおいて広告やコマーシャルとなり、莫大な利用料金がかかるのに比べ、パブリシティは記事やニュース・ネタになり、一切料金がかからないことにある。そのかわり、PRはこちらの思い通りのものになるのに比べ、パブリシティだと取材者の思惑がからむため、こちらの思い通りにいくとは限らないことである。

「アポ」
 アポイントメント(Appointment =約束)の略。「社長にアポ取ってある」などと使う。

「リコンファーム」(Reconfirm)
 再確認の意。ホテル等の予約の再確認のほか、ゲストなどに対する、業務内容、交通手段、宿泊、送迎、条件、担当者などの再確認をも指す。

「アゴ・アシ」
 食費と旅費のこと。「ギャラ、E万(イーまん、または、エーまん)、アゴ・アシ別」(3万円の出演料で、食費と旅費は別途支払われる、の意)などと使う。

「おはようございます」
 時間の観念のないひと(例えば音楽家)の、その日最初に逢ったときの挨拶語。アマチュアがプロに対してなど、目上のひとに対しては使わない方がよい。例えばリハーサルのはじめなどに、プロの先生が「おはよう」といったときには「おねがいします」と答えよう。

「おつかれさまでした」
 時間の観念のないひと(例えば音楽家)の、その日の別れの挨拶語。アマチュアがプロに対してなど、目上のひとに対しては使わない方がよい。例えばリハーサルのおわりに、プロの先生が「おつかれさん」といったときには「ありがとうございました」と答えよう。

「楽隊語」
 これには倒置語と特殊語とがある。
 倒置語は、語順を入れ換える方法。例えば「きたない」は「ナイキタ」になり「きれい」は「レイキ」になる。また形容詞は、「だ」や「な」の語尾がつき、形容動詞化や副詞化して活用する。例としては「楽屋はナイキタだ」とか「レイキな楽屋」などが挙げられる。動詞の活用は「する」の語尾をつけてサ変動詞化する。また、2字語(2音価)は長音化することにより3音価の倒置語となる。例えば「部屋」という言葉が「ヤーヘ」など。そして1字語(1音価)に至っては、その母音を独立させた上で更に長音化させ、3音価の倒置語に仕立てるという荒業をしている。例えば「タバコの火を貸して」は「バコタのイーヒ貸して」となるのである。
 特殊語には、2種類ある。ひとつは性別の特殊語で、男性を「ドゥア(独語で長調= Dur)」で表し、女性を「モール(独語で短調=moll)」で表し、更にそれぞれ倒置する。したがって、男性は「アードゥ」女性は「ルーモ」となる。もうひとつは数で、それぞれ次のようになる。
  1=C(ツェー)
  2=D(デー)
  3=E(エー)
  4=F(エフ)
  5=G(ゲー)
  6=A(アー)
  7=H(ハー)
  8=オクターヴ
 用例をいくつか挙げる。
 「エーマのアードゥはブーデだなあ」(前の男はデブだなあ)
 「ナリトのルーモはスーブだなあ」(隣の女性はブスだなあ)
 なおこの種の言葉は紛れもなくアウト・ロー言葉なので、アマチュアは理解できるにとどめ、みずから使用するのは慎んだ方がよい。
 [歴史]
 一説に楽隊語は、トーサイ(斎藤=斎藤秀雄)たちが使いはじめたのが起源とされている。これを俗に「楽隊語トーサイ起源説」という。それが戦後、ズージャ(ジャズ)のアーティストに広まったときには、ドイツ語を原典とする表現は影をひそめ、全て日本語と英語に原典を求める言葉となっていた。例えば女性のことを「ルーモ」と表現せず「ナオン」というのは、ズージャの連中によっているのである。例えば彼らは \63,000.-のことを「アー万エー千」とはいわずに「エー万イー千」というので、注意が必要である。
 その後ズージャ言葉はポップス界へと広まり、折から試験放送、本放送にこぎ着けていたTV界にも、多大な影響を及ぼすのである。ただ、TV界の現在を特徴づけるギョーカイ用語は、ズージャ言葉と、劇場スタッフ(舞台監督、照明、大道具、小道具などの業界)のスラングとの、混血語であることは紛れもない。

「ギョーカイ(業界)用語」
 主としてTV界で使われている言葉。例えば「ワラう」(=排除する)や「ケツ・カッチン」(=同日に別の予定が入っていてあがりの時刻が決まっており、時間がおせない)などがあるが、全くもって、知る必要がない。


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