11.協賛広告活動について

 協賛広告とは、主に公演パンフレット(プログラム)など楽団発行の印刷物に掲載する、企業広告のことをいう。自治体やメセンヌ(文化助成企業)からの多額の助成が受けられないアマチュア(アマ)のオーケストラ(オケ)にとって、協賛広告収入は重要な資金源となるので、その対応には充分注意しなければならない。

 本稿では、協賛広告の企画から営業、制作、集金等アフターケアに至るまでの概略を述べることとする。


11.1.協賛広告活動概説

 この作業は、楽団マネージメント上多岐のジャンルにかかわるうえ、その活動期間も長く、さらに作業にたずさわる楽員の動員数も多いため、本活動の責任者は広い視野を要求されることになる。また他のジャンル(印刷出版部門など)と協調させなければならない分野や重複する分野も多いので、それぞれのジャンルの責任者どうしのバランスの取り方に、その成否がかかっているともいえるのである。

 作業手順の概略は次のとおりである。

  1. 広告募集紙面洗い出しおよび価格設定
  2. 依頼企業選定および担当者割当
  3. 営業アイテム制作
  4. 営業実務(セールスおよび契約)
  5. 営業管理
  6. 広告原稿
  7. 印刷物制作
  8. 完成品提示および集金
  9. 事後処理

 要するに協賛広告担当者は、営業(セールス、契約、集金)としての性格をもつとともに、印刷出版業務の一部代行者としての性格をもつともいえるのである。


11.2.協賛広告活動の前提

 協賛広告活動について論じる前に確認しておかなければならないのは、広告掲載可能な印刷出版物にはいったい何があるのか、という点についてである。

 次に確認しておかなければならないのは、協賛広告掲載料から得られる収益金は一種の賛助金としての性格をもっている、という点についてである。さて協賛広告について企業の側から考えてみると、市販されている(商業ベースに乗っている)雑誌とは異なり、アマオケの公演パンフレットなどへの広告掲載は、決してまともな広告効果を期待することはできない、ということがいえる。確かにそのぶん広告掲載料は廉価なのだが、それにしても広告効果があまりにも低すぎるのである。ほんらい広告とは、その広告宣伝費をはるかに上回るだけの利潤をもたらすものに、仕上げてゆかなければならないものなのである。しかるにアマチュア団体への広告宣伝費の投資は、ほとんどの場合、投資分の売上げ(利潤ではない)すらもたらさないのである。しかし、協賛広告は集まる。

 それは、各企業にとってこのような広告宣伝費の投資は、その多くを、消費者還元サービスとしてやメセナ活動として位置づけているからである。したがってアマチュア団体にとって協賛広告による収益金は、一種の賛助金としての性格をもっているのである。


11.3.活動の手順

 協賛広告活動の手順について、以下に詳述する。


◇広告募集紙面洗い出しおよび価格設定

 楽団発行の全印刷物のうち、広告媒体となるものについて考えてみる。

 まず広告としての刺激効果(質的効果)と閲覧効果(量的効果)、更には保存率に関して、各媒体ごとに考えてみる。

◆パンフレット:
 媒体一冊中には、かなりの件数の広告が掲載されることになるので、広告一件あたりの刺激効果は決して高くない。予想される閲覧効 果も、発行予定部数や公演会場のキャパシティを超えて閲覧されることは ないので、高い効果は望めない。ただし保存率は、全媒体の中でいちばん 高い。

◆チラシ
 この媒体に複数の広告が掲載されることは極めて希であるので、刺激効果は原則として高いといえる。また大量に発行される媒体なので閲覧 効果は高い。ただし保存率は低い。

◆ポスター
 刺激効果、閲覧効果ともに、媒体の発行枚数や設営ロケーションに大きく左右されるので一概にはいえない。おそらくどちらの効果も、パ ンフレットとチラシの間の値が予想される。

◆チケット
 この媒体は、それ自体が商品として取り引きされるものであるため、それなりの刺激効果が期待される。しかし流通数に限りがあるために 閲覧効果は低い。保存率は極めて高い。


 次に、各媒体ごとの広告掲載可能スペースについて考えることにする。以下に可能性のあるスペースを示す。

◆パンフレット
 本文(ほんもん)中の広告ページ、カコミ広告など。また表 2(表紙裏)、表3(裏表紙裏)、表4(裏表紙)など。

◆チラシ
 裏面全面。または表紙下部(脚部)。

◆ポスター:表紙下部(脚部)。

◆チケット:本券裏面。


 さらに、楽団としてどのような基準で広告掲載をするのか、またどれだけの広告掲載スペースを割くのかを、印刷出版担当者とともに決定することになる。次に基準の一例を示す。

◆パンフレット
 広告掲載量は、本文全体の4割程度までに押さえる。見開き全面を広告のみにしない。プログラム、挨拶文、プロフィールなど主要ペ ージ脚部には、広告を掲載しない。表4には広告を掲載しない。表2と表3については、原則として全面広告を掲載し、クライアントが見つからな いときには白紙のままとする。全面広告ページは、左ページのみとする。

◆チラシ
 表面下部(脚部)はデザインを損なうので掲載しない。裏面全面に 掲載。半ページ掲載のクライアントしか見つからなかった場合には、原則 として上半分にプロモート用コピーを記載し、広告は下半分に掲載。

◆ポスター
 チラシ表紙と同様の理由で、広告媒体としない。

◆チケット
 本券裏面に掲載。クライアントが見つからないときには白紙のま まとする。


 以上、紙面の性格の位置づけや掲載スペースの割り出しが完了したら、最後に価格の設定をすることになる。

 価格設定の基準は、パンフレットの本文1ページ広告を基準にするとわかりやすい。例えば次のような考え方になる。

 むろん各媒体につける係数はこの限りではないが、パンフレット本文に関しては小さい広告ほど割高に設定する必要がある(逆にいえば全面広告ほど割安)。

 このほか、右ページと左ページとで価格差をつけるとか、極端な場合には、総ての掲載ページや掲載位置で価格設定をすることも考えられるが、これらは煩瑣(はんさ)になるだけなのであまり薦められない。


 ◇依頼企業選定および担当者割当

 協賛広告活動をするにあたって、まず依頼企業の選定をしなければならない。

 さて企業選定に先立ち、対象となる業界を絞り込む必要がある。オーケストラの公演という性格から、以下の業界などが考えられる。

 もとより業種による優劣はないが、しかし大衆のもつイメージには確実に差があるため、オケとしてもある程度は観客のイメージに添う方向で広告掲載企業を選定しなければならないのである。

 さて選定企業の業種に関して大きくまとめると「大型サービス業」「地元財界の中心企業」となるが、このほか活動地盤に密着した企業も選定しておく必要がある。つまり楽団がいつも活動している地域内の、楽団員がよく利用する小売店や飲食店からの広告掲載をいうのだが、この種の広告掲載の意味は、活動地盤の賛同を得ている団体であること、地域と密着したクラシック音楽団体で決して気位が高くないことなどを印象づけるところにある。また協賛企業広告活動の営業(広告掲載依頼活動)の面からも、気軽に依頼しやすく契約成功率も高いため、契約全体の基礎量として位置づけることもできるのである。

 さて次に、実際に候補となる企業の選定を業界ごとにすることになる。このとき、候補企業が契約に応じてくれるかどうかという契約成功率も考慮にいれて、広告掲載募集数の数倍の候補企業を選定しておかなければならない。また同業種いくつまで掲載できるかという判断基準を業種ごとに定め、第一、第二、第三候補といった形でリストアップするのが望ましい(この判断基準を持たないまま手あたりしだい広告掲載契約を交わし、その結果、多数の競合企業の広告を載せるような破廉恥なことを起こすと、クレームがくるばかりではなく、集金の折りにトラブルを招いたり継続契約の大きな障害となって、将来の協賛企業広告活動全体にも悪影響を及ぼしかねない)。

 なお蛇足だが、候補企業選定の際のいちばん便利な資料は、電話帳(職業別)である。

 候補企業が絞り込めたら、営業担当者を選定しなければならない。このとき配慮しなければならないのは、ひとり当たりの営業ノルマ数である。目安としては、営業1回につき回れる企業数は5〜7企業、大きな負担を感じないで出られる営業回数は3回まで、というのが正直なところである。つまり、ひとりで回れる企業の数は15〜20といったところなのである。過去の事例から成功率を割り出して担当者数を決めてもよい。

 担当者の選定は、ある程度機械的に割り振りしてもよいが、ただし大手企業やポイントとなる企業に対しては、代表者が直々に営業を担当するのが望ましいといえる。


 ◇営業アイテム制作

 広告掲載契約に用いる営業アイテムには下記のものがある。営業アイテム制作担当者は、公演の基本コンセプトをおさえたうえで、営業スタンスが明快なアイテムを制作しなければならない(6.書式例参照)。


 ◇営業実務(セールスおよび契約)

 広告掲載依頼およびその契約を目的とした営業活動には、多くの楽員が携わることになる。このなかには楽団スタッフ等の未経験者も多く、したがって代表活動未経験者も多い。ほんらい、この種の営業活動には決まった方法などはなく各担当者の自主性にまかせればよいのだが、先に述べた代表活動未経験者へのヒントとして、さらには熟練者のチェックリストとして、この種のオーソドックスな営業パターンを以下にシミュレートしてみることにする。

  ◆準備

 各営業担当者(楽員)は、まず営業アイテムの入った封筒を必要部数(訪 問予定企業数+α)準備することになる。このとき、楽団印などが必要書類に捺印されているかどうかを確認しておかなければならない。また、契 約書の書式によっては担当者個人の印鑑が必要になることもあるので、場合によっては個人印の準備もしなければならないことになる。

筆記用具、特にボールペンなど、インクを使用するペン。契約書の記載に使用。

名刺。個人用のものを持っていない場合には、楽団代表者等の名刺の下に担当者名等(ほかに、住所、電話番号)をペン書きしたものを準備するか、 広告掲載依頼書の片隅にあらかじめ担当者名等をペン書きしておく。

  ◆アポイントメント

 企業訪問をする前に、できればアポイントメント(面会予約。以下アポ) をとっておくのが望ましい(人間関係という観点で考えれば明白だが、そ もそも人間というものは「未知の他人に対してはあまり寛容ではない」と いう特質をもっている。しかし、それでも未知の他人に対する警戒心を解 くいくつかの例外がある。それは、信頼のおける知人の紹介がある場合であり、アポがしっかり取れている場合である。このどちらもないときには、 突然企業訪問をしても門前払いの扱いを受ける場合が多く、また面会して もらえても個人の器量を否定的なスタンスで観察される場合が多く、よほ ど自分に自信があるもの以外は避けるべきだといえるだろう。訪問する企 業に強力なコネがあるのなら別だが、実際にはほとんどの場合そのようなコネもなく、結果的には企業訪問自体がその企業との最初のコンタクトと なると考えられるので、このアポを取るという作業がこの種の営業にとっ て大きな突破口となるのである)。

 アポは電話でとるのが基本である。相手企業の(広告宣伝関係の)担当者の所属および氏名が判明している場合には個人(担当者)に、担当者名は 不明だが担当部署が判明している場合にはその部署に、担当部署も不明の場合には受付等に回線をまわしてもらうことになる(交換台で指示される 場合もある)。いずれの場合も、応対くださった総ての方に簡単な主旨説 明をするほうがよい。そのうえで(最終的に行き着いた)担当者には、やや詳しい主旨説明をして面会を求めることになる。要するに、面談する時刻と場所の決定および確認である。もしもこのとき拒否されたならば、丁重に謝辞を述べて潔く引き下がらなければならない。

 各企業における広告宣伝関係の部署はさまざまである。一般的には広報担 当がその任にあたることが多いが、このほか広告、営業、総務、サービス などの部署が務めることもある。また小売店や飲食店などでは、店長やチ ーフマネージャーが兼任している場合も多い。なおこれらの企業別に、担 当部署および担当者のリストを作成して情報の蓄積をはかると、協賛企業 広告活動において将来的に大きな財産となるだろう(この項でアポの重要 性について論じてきたが、しかし業種によっては、アポをとらずに直接押 しかけた方が契約成功率の高いところもある。この見極めはきわめて難し いが、ただ目安としては、大手企業ほどアポが重要になり個人商店などはむしろアポなしの方がよい、といえるだろう)。

  ◆企業訪問および契約交渉

 企業訪問の際には、手持ちの品は書類鞄などなるべく最小限にとどめ、服 装もこざっぱりとしたものを着用する方がよい。学生の場合には、リクルートスタイルにするのも一方法である。要するに、相手企業の担当者に不快感を与えないことであり、オーケストラというもののイメージを損なわ ないことである。

 企業を訪問したら、まず最初に受付担当者か、入口付近の手の空いた社員に来意を告げることになる。訪問の意図は、応接者ひとりひとりに重複を 恐れず繰り返し簡略に述べなければならない。そのうえで担当者への取り次ぎを乞うのである。またこのとき、アポが取れている場合にはその旨も 伝えておかなければならない。

 多くの場合、担当者に取り次ぐあいだ応接室などに通されることになる。

 このとき、案内者に着席を勧められるか案内者が退室するまでは、決して着席してはならない。また担当者が入室したときには速やかに席を立ち、原則として直立で挨拶を交わし(名刺交換を含む)、その後担当者に勧め られるまでは着席してはならない。

 挨拶がひととおり終わったら来意を詳しく告げる。このとき依頼書と前回 のパンフレットを提示する。もちろん、場合によってはその他の資料を駆 使して楽団PRをしてもよい。もしもこの段階で峻拒された場合には、潔 くあきらめること。しかし、相手が興味を示しているときはいうにおよば ず逡巡しているときも、ねばり強く交渉した方がよい。迷っているという ことは、相手に何らかの興味があるからなのである(この後も判断基準は 同様)。

 次に企画書を提示して企画の説明をし、さらに契約をお願いする。ここで契約の了承を得られればよいが、もしも最後まで迷っているような場合に は後日再挑戦するとよい。

 契約の了承を得られたときには速やかに契約書の作成にかかる。これは絶対に後日にまわしてはならない。たとえば印鑑がないとか責任者不在であ るとか、さまざまな理由で契約締結延期を求められた場合でも、契約書のタイトルの前に「仮」をつけるなどして、とにかく書類を作成するべきで ある。なお、掲載料のダンピング要求があったときには、自分に権限がある場合には独自の判断で価格設定した契約書を交わし、権限のない場合に は拒否するかペンディングにするか独自の判断の「仮」契約を交わすとよ い。

 契約締結後、できる限りその場で広告原稿(版下など)の入稿をお願いす る。その後、納金期日(集金に訪れる期日)を告げ、そのとき広告原稿と 完成印刷物(チラシ・チケット・パンフレットなど)を持参する旨を伝えること。

 契約の成功、不成功にかかわらず、最後はすがすがしい態度でお礼を述べ ること。なお契約が成立した場合には、関連企業でこの種の主旨(アマチ ュア楽団の公演の協賛企業広告掲載)に賛同してくれそうなところを、担 当者名を含めて紹介してもらうとよい。この「紹介」がある方が「アポ」 だけのときよりも、さらに有効だからである。

 広告掲載契約交渉における楽団担当者の注意すべき点は、次のとおりである。発言ははっきりと明瞭でいくぶん大きな声をもっておこなうこと。曖昧な発声や表現は嫌われる。また、発言しているときと拝聴しているときの態度を、明瞭に区別すること。つまり、身体中で話し、身体中で聴くことなのである。

 総ての結果は、できる限り当日中に楽団の営業管理本部に報告すること。 また契約書と広告原稿も、できる限り早い時期に本部に提出しなければな らない。


 ◇営業管理

 ここでいう営業管理とは、協賛企業広告掲載契約の営業の情報を集中管理したり、締結した契約にしたがい各情報を次のステップ(印刷部門や経理部門)へ橋渡しする部門のことをいう(営業管理は数名の楽団スタッフでおこなうことになる)。だから、ほんらい営業実務をはじめ総ての協賛企業広告契約関係の活動はこの部門の管理下にあるわけなのだが、ここではおもに情報管理について述べることとする。

  ◆営業情報の管理

 管理すべき営業情報にはいくつかある。まず楽団の各営業担当者が、いつ どの企業を訪問したかという情報である。これは対象企業選定作業の延長 線上にある情報だともいえる。また、営業結果も管理すべき情報である。要するに、契約締結の成否についてである。このとき、担当者のコメントも取材しておくとよい。たとえば「今回は契約成立にまでは至らなかった が、ある程度の興味を示しているので次回は可能性がある」とか「係長よりも課長の方がクラシック音楽に造詣が深いので、次回はダイレクトに課長にコンタクトをとる方がよい」など。

 これらの情報は、管理アイテムによって管理するとよい。考えられる管理アイテムには「対象企業リストアップ台帳」や「クライアントデータ台帳 (6.書式例参照)」などがある。

  ◆契約書の管理保存

 そもそも契約とは法律行為のひとつである。契約書は最大の注意をもって 保管しなければならない。保管方法は契約書の書式によって例外もあるだ ろうが、原則としてはファイルに保存するのがよい。このとき、必ずコピーをとって控えを作成しておくこと。契約書は換金性をもつ書類である。 契約書を紛失すると集金できないばかりでなく、楽団の信用の著しい低下をまねくことになる。重複するが、扱いには最大の注意を払わなければな らないのである。

  ◆広告原稿の管理

 広告原稿というものは、各企業から借用しているものである。よって、借 用中は責任をもって保存管理し、使用後は必ず返却しなければならない。 借用中においては、常に原稿の動向を管理責任者が捕捉していることが肝要である。特に注意を要するのは、印刷所からの返却の際に生じる紛失で ある。広告原稿の入稿の際には必ず「要返却」扱いにしておかなければな らない。そのうえで、印刷所が印刷作業の最終段階に入った時点で、原稿 の返却を求めなければならないのである。特に広告原稿は、扱う点数が多 く、サイズが小さいこともあって、紛失しやすいものである。広告原稿を企業から借用した時点で総てコピーしておくと、確認しやすく紛失予防に もなるだろう。

  ◆エラーチェック

 楽団の営業担当者から契約書と広告原稿を受理するときには、必ずエラー チェックをしなければならない。チェックすべきところは、契約書の記載 漏れ、曖昧な箇所、捺印の不備、広告原稿(特に版下など印刷原稿)の汚 れなどである。契約書の記載ミスについては各担当者も神経質にチェック するものだが、案外盲点になるのは「版下の汚れ」である。版下の汚れは、 版下だけをみているときには気づきにくいものだが、完成した印刷物にお いてはかなり目立つものである。契約した企業との間にトラブルが起こる 原因ともなるので、注意が必要である。

  ◆集計および情報収集、情報処理

 契約が成立した分について、総ての情報を集計しておかなければならない。 これには広告掲載料金の総額計算も含まれる。また情報管理とも重複する が、クライアントデータ台帳に詳細な情報を記入するとともに、今後の協賛企業広告契約活動のための分析をしておく必要がある。


 ◇広告原稿

 広告原稿は、なるべく広告契約と同時に入稿してもらうのが望ましい。また広告原稿は、なるべく版下(印刷原稿)の状態で入稿してもらうのが望ましい。この版下は、印刷サイズよりも大きめのものの方が望ましい。

 広告原稿で注意しなければならないのは、版下がない場合と、版下にオプショナルなデザイン変更の注文がある場合と、それらの原稿に生写真が付属している場合である。これらの場合は印刷所で新たな版下を製作することになるのだが、とうぜんのことながらこのことはコストアップにつながることになる。また、企業が版下製作について一任してくれるならともかく、ほとんどの場合、企業の意向をきくために担当者が何度も足を運ぶことになるうえ、社名や社章やロゴなどのミスが起こりやすく、そのぶんリスクも大きい。このような場合には原則として版下製作料を別途請求することになるのだが、企業の担当者によっては理解してくれないことも多く、何かとトラブルの原因となりやすい点にも注意しなければならない。


 ◇印刷物制作

 原則として印刷物制作については、そのほとんどの作業を楽団の印刷出版部門がとりおこなう。協賛広告担当者が印刷物制作にかかわるのは、掲載紙面の洗い出しのほか、版下を作成する場合と掲載広告の校正についてだけである。ただし、これらの作業(版下作成および校正)は決してミスが許されないので、細心の注意と配慮を要する。またミスを犯した場合は、金銭的リスクに直接つながることになる。


 ◇完成品提示および集金

 広告メディア(広告を掲載した各種印刷物)が完成したら、クライアント(広告主)に対して完成メディアを提示し、そのうえで広告掲載料を徴収しなければならない。

 広告メディアがポスター・チラシおよびチケットの場合は、常識的には各メディア完成後1週間以内にクライアントに対して提示し集金すればよいので、比較的問題は少ない。問題となるのは公演パンフレット(プログラム)の場合である。

 公演パンフレットに広告掲載したクライアントへの完成メディア提示および広告掲載料の徴収には、2通りのパターンがある。ひとつはメディア完成以降公演開催以前に実施するものであり、もうひとつは公演開催後1〜2週間以内に実施するものである。しかし両者には一長一短がある。

 さてほとんどの場合、公演パンフレットが印刷所から納品されるのは、公演間近になってからである。納品されてから公演までの短期間に、総てのクライアントに対して提示・集金するのは、かなり忙しく無理がある。特に、その担当者がオーケストラプレイヤーとしての楽員であることを考えたとき、公演直前の練習時間を割かせることによる公演への悪影響が懸念され、どうしても躊躇(ちゅうちょ)することになるのである。

 公演後の実施については、公演結果が不本意なものであっても報告しなければならないところに問題がある。特に広告掲載の場合、クライアントは予想集客数に大きな関心を抱いているはずだが、これが予想を大きく下回ったときには、クライアントのなかには態度を豹変させるところがあるかもしれないのである。

 さて、この時点で得てして起こりやすいエラーに、集金もれがある。集金もれは、納金したクライアントに対する背信行為であるばかりでなく、楽団の社会的信用を著しく傷つけることにもなるので、管理者は細心の注意をしなければならない。
 広告掲載料の徴収に際しては、必ず契約書(本票:控えはクライアントが保存)を持参しなければならない。そして契約価格を確認したうえで広告掲載料を徴収し、領収書を発行することになる。ほとんどの場合アマオケは、法的には「法人」ではないので、領収書発行者は楽団代表者「個人」ということになる。よって領収書は、あらかじめ楽団代表が署名捺印して発行したものを持参するか、担当者がその場で個人の責任で発行することになる。なお契約金額によっては収入印紙が必要となるので注意しなければならない。

 この担当者は、契約締結時の担当者が務めるのが原則である。担当者は、領収した掲載料を速やかに会計など経理担当者に納付しなければならない。なおこれら掲載料金は、次のシーズンの資金とすのが予算立案上健全である。に会計など経理担当者に納付しなければならない。なおこれら掲載料金は、次のシーズンの資金とするのが予算立案上健全である。


 ◇事後処理

 クライアントに対する事後処理としては、広告原稿の返却、公演報告書の提出、礼状の発送などがある。このうち報告書と礼状については、単一文書に盛り込むこともできる。

 これらの事後処理は原則として郵送になるが、掲載料金の集金までに広告原稿が印刷所から返却されていたときには、集金と同時にクライアントに対する事後処理をしてもよい。


11.4.その他

 協賛広告活動と関係のあるその他の事項について、以下に述べることとする。


 ◇継続契約について

 協賛広告活動は、とかく手間暇がかかるものである。公演の度に、協賛広告活動を毎回同じように展開するとなると、その人的・時間的リスクは莫大なものになる。楽団としても、これらのリスクを縮小する方向での努力をしなければならない。

 先に述べた情報管理による必要情報の蓄積もこれらのリスク縮小手段のひとつであるが、しかしこの情報管理は楽団内のデスクワークでしかなく、実際の協賛広告活動の多くを占める営業実務についての効率アップには、ほとんど寄与していないのである。

 そこで考えられる営業実務の効率を上げる方法には、継続契約の確立がある。

 継続契約には決まった方法などはない。そもそも継続契約とは、協賛広告契約のオプション契約と認識する方が健全なのである。そこで、担当者は企業ごとにその都度、継続契約の方法や条件を開発してゆかねばならないのである。現実的には、楽団担当者と企業担当者の両者のあいだで調整しながら決定することになる。そのためには、楽団担当者は日頃から企業担当者と懇意になっておく必要があるといえるだろう。要するに両者の信用のうえに継続契約の方法を確立することになるからである。その点から考えれば継続契約は、初回の広告契約のときよりも、2回目か3回目の契約のときにもちだす方が整合性のある提案かも知れない。

 継続契約の条件としては、期間、回数、掲載料、簡素化した方法などが挙げられる。このうち期間については、ある程度見通しの利く期間(2〜3年など)を設定するか、企業担当者がそのポストに配属されている可能性のある期間を設定するのが現実的である。回数については、期間内に開催が予定されている公演について、総計10回未満の回数を設定するのが現実的である。掲載料は、期間内は据え置くか2〜4年に1回改定することにしておくのがよい。簡素化した方法としては、電話連絡による契約関係の発生、契約書の送付、広告原稿の送付もしくは原稿の楽団預託保存、広告原稿の返送、完成メディアの郵送、掲載料の銀行振り込みなどである。

 以上の条件は、対象企業にとって検討の余地にあると考えられる範囲のものであるが、もしもこれらの条件よりも楽団にとって大きなメリットのある条件を企業側が提案したときには、それを拒否する理由はどこにもない。

 いずれにせよ継続契約は、性急すぎると企業担当者から不信感を抱かれることになり、契約そのものを反故にされかねないので、充分な配慮が望まれるところである。


 ◇実社会とのかかわりについて

 協賛広告活動とは、楽団が任意のアマチュア団体として実社会と密接なかかわりをもつ活動である。平易に表現するならば、アマがプロと契約をする活動なのである。協賛広告活動をとおして、楽団(つまり担当者)が実社会(つまり企業)に迷惑をかけないよう、細心の配慮が望まれるのである。

 特に学生オケの場合、営業担当者はほとんど実社会を知らない楽員ばかりであると予想されるので、たとえば「ビジネスマナー入門」などの書籍を読んで勉強するなど、実社会との調和を大命題とする必要があるだろう。


 ◇スポンサーについて

 協賛広告活動とは直接の関係にはないが、この活動をとおして楽団または公演に対するスポンサーと巡り会える可能性がある。

 楽団または公演に大きな興味を示すクライアントがいたときには、その企業への営業活動は楽団代表者みずからが務め、営業活動のなかで機会をみつけてメインスポンサーの依頼をするとよい。


11.5.タイムテーブル

 協賛広告活動のタイムテーブルの一例を以下に示す。

公演90日前頃:チラシ・チケット裏面広告用企業選定(2日間以内)
      :同上契約活動期間(5日間以内)
      :同上広告原稿入稿・印刷(印刷期間10日間)

公演70日前頃:チラシ・チケット納品・運用
      :完成メディア提示・集金(7日間以内)
      :広告原稿返却

公演60日前頃:パンフレット広告掲載スペースの洗い出し(3日以内)
       パンフレット広告用企業選定・担当者割当(7日間以内)

公演50日前頃:同上契約活動期間(14日間以内)
      :同上広告原稿入稿

公演30日前頃:最終調整分契約期間(7日以内)
      :同上広告原稿入稿

公演20日前頃:印刷(印刷期間10日間)

公演7日前頃:パンフレット納品

公演終了直後:完成メディア提示・集金(10日間以内)
      :広告原稿返却および報告書・礼状の発送


11.6.書式例


 以下に、各種文書アイテムの記載例を示す。

平成○年○○月○○日
関 係 各 位

○○管弦楽団代表 ○○ ○○


○○管弦楽団第○○回定期演奏会 協賛広告掲載のおねがい

 拝啓
 ○○の候、皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて私ども○○管弦楽団では、きたる○○月○○日( )に○○県民文化ホールにおいて、○○管弦楽団第○○回定期演奏会を開催する運びとなりました。
 さて本公演を開催するにあたり、私どもでは数種類の印刷物を発行することになっております。公演パンフレット、ポスター、チラシ、チケットがそれにあたるのですが、このうちポスター以外の印刷物には、何らかの形で広告掲載スペースを設けており、是非とも皆様からの印刷物発行にかかわるご助力を賜りたいと考えております。
 つきましてはまことに勝手なお願いで恐縮いたしますが、何卒、私どもの主旨にご賛同をいただきました上で別記方法によりご協力賜りたく、ここにお願い申し上げます。
 どうぞよろしく、重ねてお願い申し上げます。

敬具

 

公演概要

1.公演名称:○○管弦楽団第○○回定期演奏会
2.公演日時:平成○年○○月○○日( )
       午後○時○○分開場 午後○時○○分開演
3.公演会場:○○県民文化ホール 大ホール
4.主  催:○○管弦楽団
5.共  催:(財)○○県文化振興協会
6.後  援:○○県、○○県教育委員会
7.曲  目:ペンデレツキ/広島の犠牲に捧げる哀歌
       メシアン/トゥーランガリラ交響曲
8.出  演:指  揮/A.ニキシュ
       管 弦 楽/○○管弦楽団
9.入 場 料:全自由席 前売り/\1,200.- 当日/\1,500.-
10.総 経 費:\3,500,000.-

 

印刷物制作発行企画

1.品  目:○○管弦楽団第○○回定期演奏会
       1.公演パンフレット 2.チラシ 3.チケット
2.目  的:本公演の存在および意義を広く一般聴衆に伝え、興味を喚起するとともに、理解を深める資料を提供する
3.仕  様:パンフレット/B5版 オフセット印刷 本文24ページ単色刷り
       チラシ/B5版 オフセット印刷 裏面単色刷り
       チケット/ 70×170mm オフセット印刷 裏面単色刷り
4.印 刷 所:○○印刷
5.発 行 日:パンフレット/○○月○○日
       ポスター・チラシ、チケット/○○月○○日
6.発行部数:パンフレット/2,500部
       チラシ/20,000枚
       チケット/2,000枚
7.発 行 者:○○管弦楽団出版編集部
8.総 経 費:\400,000.-
9.運  用:パンフレット/公演当日 公演会場にて配布
       チラシ/○○月〜公演当日 県内各種施設などにて配布
       チケット/○○月〜公演当日 県内プレイガイド、公演会場
                     電話予約センター、楽団事務局
                     楽員、その他

 

協賛広告掲載募集企画

1.品  名:○○管弦楽団第○○回定期演奏会 パンフレット、チラシ、チケット
2.掲載料金:パンフレット/1ページ(B5フルサイズの80%,以下同様) \60,000.-
1ページ(表2および表3) \80,000.-
              1/2ページ \35,000.-
              1/4ページ \20,000.-
       チラシ/(B5フルサイズの80%,裏面広告) \100,000.-
       チケット/(60×120mm,本券裏面広告) \50,000.-
3.発行部数:パンフレット/2,500部
       チラシ/20,000枚
       チケット/2,000枚
4.そ の 他:版下を添えてお申し込みください
       版下制作の場合は実費を申し受けます

 

広告掲載契約書(楽団保存)

 

○○管弦楽団御中


○○管弦楽団第○○回定期演奏会への広告掲載を、広告原稿(版下)を添えて申し込みいたします
       ◇版下がない場合には制作実費を添えて申し込みます
       ◇希望の図案は裏面に描いてあります


広 告 掲 載 料:金        円也

広告占有 スペース:(全・1/2・1/4)ページ.その他(        )

納 金 期 日:平成○年    月    日(    )

版 下 制 作 費:金        円也

平成○年    月    日(    )


広告依頼主                      印





・・・・・・・・・・・・・・ < キ リ ト リ セ ン > ・・・・・・・・・・・・・・
(大切に保管しておいてください)


広告掲載契約書(控)


料  金:金        円也(含版下制作費)

納金期日:平成○年    月    日(    )


○○管弦楽団 担当(      )

              様


ご あ い さ つ

 拝啓
 ○○の候、皆様にはご清栄のことと存じます。
 さて私ども○○管弦楽団では、去る○○月○○日( )、○○県民文化ホールにおいて○○管弦楽団第○○回定期演奏会を開催し、おかげさまを持ちまして盛況のうちに公演を終えることができました。これもひとえに関係各位の皆様のご協力のたまものと、団員一同たいへん感謝いたしております。
 またこの公演につきまして、過日、印刷物への広告掲載のご協力をお願いいたしましたところ、御社におかれましては快くご承諾いただき、ほんとうにありがとうございました。おかげさまをもちまして、私どもの発行印刷物もそれなりに誇れるものに仕上がりましたし、また経済的にも大きな力となりました。重ねてお礼申し上げます。
 公演は、1800名収容の会場に集客数1784名という、ほぼ満席状況となり、楽団創立以来の快挙ということで、各方面より公演の盛況さにお誉めのお言葉を頂戴いたしております。また演奏面におきましても、長足の進歩がみられるとの、いささか面はゆいお言葉もいただきました。
 私どもはいま、地域の関係各位のご助力の大きさに、あらためて感じいっております。そして、これらの支援に少しでも応えるには、なお一層の精進しかないとの覚悟をも、新たにいたしております。
 御社の今後益々のご発展を祈念いたしますとともに、これからも私どもの活動にご支援たまわりますよう、重ねてお願い申し上げます。
 上、略儀ながら演奏会のお礼とご報告まで。
敬具


 平成○年○○月○○日( )

〒***-** ○○○○○○○○○○○○○○
でんわ(****)**-****
○○管弦楽団代表 ○○ ○○

自  署  

 

協賛広告クライアント・データ

データ記載日:   年   月   日

クライアント企業名:                 (業種:     )

クライアント担当者:                 (役職:     )

営業担当者:               営業期日   年   月   日

契約の可否: 可 否 (いずれかに○をつけること)

◇営業担当者による評価(主観・直感で答えること)
 (評価基準:5=最良、4=良、3=ふつう、2=悪、1=最悪)
 1.企業のメセナ(文化支援)活動への理解 (5・4・3・2・1)
 2.担当者のメセナ(文化支援)活動への理解 (5・4・3・2・1)
 3.企業の文化活動への理解 (5・4・3・2・1)
 4.担当者の文化活動への理解 (5・4・3・2・1)
 5.企業の音楽活動への理解 (5・4・3・2・1)
 6.担当者の音楽活動への理解 (5・4・3・2・1)
 7.企業のクラシック音楽への理解 (5・4・3・2・1)
 8.担当者のクラシック音楽への理解 (5・4・3・2・1)
 9.広告契約への意欲 (5・4・3・2・1)
 10.継続契約の可能性 (5・4・3・2・1)
 11.企画趣旨に対するこだわりの強さ (5・4・3・2・1)
 12.担当者の人柄 (5・4・3・2・1)

◇クライアント・リサーチ(わかる範囲内で答えること)
 1.企業リサーチ(住所・電話FAX番号・資本金・創業・年商・従業員数・実績・関連会社・その他)



 2.担当者リサーチ(住所・電話FAX番号・年齢・学歴・体格・人相・性格・特徴・趣味・上司・その他)



◇感想・雑感・その他(前項までで記載しきれなかったことを含め、気のついたことを細大もらさず書くこと)



◇広告原稿(版下など)コピー貼付スペース
 (広告掲載サイズ=   /   page)

WPO KAWAGOE MIE JAPAN since 1999