演繹推理における思考と具体性


 演繹推理とは、1つないしいくつかの前提命題にしたがって、 論理的に結論の命題を導くことである。

 前提に「PならばQ」といった条件命題があるとき、 その命題の否定である「PでないならばQでない」、 また命題の逆である「QならばPである」は必ずしも真とは限らないが、 命題の対偶である「QでないならばPでない」は必ず真である。 つまり命題の対偶を調べることによって、論理的に命題を導くことができる。

 たとえば「ビール」「コーラ」「35歳」「17歳」といった4枚のカードにおいて、 「アルコールを飲んで良いのは20歳以上である」という ルールが守られているかどうかを確かめるためには、 少なくともどのカードを調べる必要があるかを求める問題があるとする。 この問題ではルール違反の可能性があるカードを選択しなければならない。 これは、命題の対偶である「20歳未満はアルコールを飲んではいけない」ということを 調べることによって簡単に解答を得ることができる。 ルール違反は「20歳未満」が「アルコール」を飲むことにあることから、 ルール違反の可能性があるカードは20歳未満である「17歳」のカードと アルコールである「ビール」のカードということになる。 ゆえに、正答は「17歳」と「ビール」である。

 演繹推理には意味情報を増加させることはなく、 演繹推理によって導かれる結論の命題は、 すでに前提命題のなかにある情報をあきらかにすることでしかないのである。


「現代心理学における情報処理パラダイムの重要性」  「演繹推理における思考と具体性」  「ステレオタイプと偏見について」


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